2013-01-01から1年間の記事一覧

白石晃士『ノロイ』

『ノロイ』は限りなくバラバラなシーンをその大枠としてのモキュメンタリーによって辛うじてつなぐ、そうして宇宙人と土俗的な呪い、超能力、ダムに沈んだ村、集団自殺、心霊動画……などの要素を混ぜ合わせる。その接続方法は、しだいに謎ときめいてくる。一…

2013-12-16

街は? 1.山-森という、幅広い時間に浸透している場所の、八合目より上を切り開き、平坦な土地にしたそこに設けられる、東京にある大企業が自分の商品としての家だけを建てるための新興住宅街 2.それが、新興住宅街の端に「むかしからあるもの」として残され…

(どうしても)ちっぽけなのっぽのたんぽぽ。ついでにわたしたちも、はるになると、しばしばいらしてください。

十六日に一度しか日本の上空を通過しない人工衛星おやすみが、幽霊を見た。 足下に広がるだだっ広い球体の、表面に群がっているという科学者たちが、人間の体の小ささに考慮して打ち上げた、惑星観測衛星たち。それは数ある宇宙機械の中でも、木々の発育や森…

2013-12-1

今日は月はじめらしく代々木公園の骨董市に行く。昨日は新しく丸眼鏡になった人を探そうとくるくるしたりそういうので起きたのが遅くなった。代々木公園がどこにあるのかを知らない。明治神宮という、原宿に近い場所なら知っている。そこから行くと、代々木…

2013-11-23

今のぼくの書く長編は、ひどくゆるい思考を日常として生きるために、無数のことがらがやんわりとつなげられていく。今生きることが書くことにつながるように書く。その期間、その分量が長ければ長いほど、体はその世界に入り、過去の自分から浴びせられる何…

シェイクスピア(h)

わたしはよく信じているよJeanne、あなたがわたしの息子と結婚したいということを。Jeanneの母は笑った。本当に仕方がない! 今や仲違いをしていた。Jeanはかわいい男で、とても優しい。彼は決してカフェには行かなかった。彼はあまりしゃべらない。彼は公証…

そのアウグスティヌスは、次のように書く準備をしながら、冬に降りる星空の細やかさに照らされつつ、夜中を歩いていた――こうして私は記憶と理解と意志を持っていることを私は記憶している。私が理解し記憶していることを理解している。私が意志し記憶し理解…

2013-10-20

幽霊がいる世界はきっと幽霊を見てもすぐに忘れてしまう世界だ。人が八十歳で死ぬ直前に生まれたとしても、それはそれとして生まれてから死ぬまでの新たな過去の系列が生まれている。因果律はほつれてまた固まる。なぜなら死への恐怖の強さはその対象への常…

hさんの先生にいわれたぶんしょう

「スサノヲはイザナキが黄泉の国から帰り、鼻をすすいだときに生まれた神で、同じ時に右目から生まれたアマテラスの姉弟にあたる。スサノヲは父であるイザナキに海を治めることを命じられるが、ははの国へいきたいといって泣いているばかりだったので追放さ…

2013-10-14

ほら話に対しての許容ができたというよりそれを許容できるくらいにそれを話すぼくよりも大きな地点にあることができるようになったか。自分の書く運動の持つ重大さを、音やリズムや極端な一人称に頼ることによってカバーするのではなく、書いた事物そのもの…

2013-10-05

保坂さんが純文学で売れていて文芸評論的読みがしやすい謎解きができるものの系列に大江健三郎を入れるのはそれは同時代ゲームくらいからすでに当てはまらない気がする。 それこそおかしいのが、小説にテーマはいらないと一般に要約されがちな保坂和志の思想…

2013-10-03

お父さんスイッチ「か」かたみの狭い化石ほりお父さんスイッチ「き」きりんの首についた火薬を見たお父さんスイッチ「く」くらしあんぜん足がないお父さんスイッチ「け」毛のない犬の夢を見るお父さんスイッチ「こ」交換留学生が家に多すぎる*風景によって…

『二百年の子供』

(大江健三郎『二百年の子供』に関しての別解です。もうひとつは早稲田文学⑥に)『同時代ゲーム』の末尾で、「無限に近い空間×時間のユニット」を一望する宇宙船を描いた著者が、「私の唯一のファンタジー」とする本作で新たに提示したタイムマシンは、ファ…

2013-09-21

今日は朝から神輿の音がした。外を見てみると、子どもたちがちょうど通りかかって、何メートルもある紐を抱え、連なっていた。後ろのほうから大人が「おーい、とまれ!とまれって!」と叫び、子どもたちが紐をおろす。しばらくして、白いワゴン車が紐の横を…

2013-09-20

ぼくは定期的にホルモンバランスが崩れると言ってもホルモンってなんなのか。ホルモンがなんなのかはGoogleで検索でもすれば体力さえあれば情報は読めるけれど、ホルモンバランスが崩れるから精神安定剤を飲んだり、吐き気がしたり、肌が荒れたり、ずっと疲…

「Puffer Train」を書いていたころに書いたものです 言葉はそれを発する人間の認知構造を通過して排出されるが、ならば小説における視点は、語り手の統一性という、有機物的な安心のための時間の流れを、書くという動作の段階からして裁断し続ける。量子力学…

「次回予告」

せんべいミューージック ★ 外は雨まみれ、近所のダムはすぐ干上がるくせにいざ強い雨が降るとすぐに満杯になってサイレンをウーオー鳴らし川を爆発させる。 ★ 『砂漠ダンス』とてもよかった。見えるものが変わる文体がある。そして読むにおいて「わたし」と…

早稲田文学6号に、

早稲田文学6号に、『二百年の子供』に関する文章を寄稿しました。 「大江健三郎(ほぼ)全小説解題」という企画で、近藤聡乃さんや、いしいしんじさん、青木淳悟さんなど、すごい方々がそろって大江作品について書かれているのですが、その並びのなかで書か…

栄養学の測定

19歳のときに書いたものです。 人は雑食と言われる。もちろん必要な栄養やその量は様々な客観的理由から定められてはいるものの、それを完全になぞらえる生活を送っている者はおらず、なぞらえようとする者さえ少ない。身体に害を与えるであろう多さの栄養を…

Puffer Train

http://p.booklog.jp/book/73331 2012年3月~2013年3月 以上の期間に書かれていた「Puffer Train」(168000字)を公開しました。 前回のエントリで予告していた改稿版ではありません。 改稿しているなかで、「これは改良というよりかは、まったく別のものに…

近況:第56回群像新人文学賞について

第56回群像新人文学賞の小説部門で、最終選考候補作三作のうちの一作に選ばれ、落選しました。2013年5月7日発売の「群像」6月号に選評が掲載されています。 * 今回応募したのは、「Puffer Train」(原稿用紙換算枚数250枚)でした。 当時、400枚ほどでの完…