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新聞

(*むかしの新聞から手なおしして再録
 
 
 ぼくの家のテレビの上には、半年まえから二匹の恐竜がいる。ステゴサウルスとトリケラトプス。でもそれは、骨になった化石の模型だ。人は恐竜を骨から知った。恐竜たちは死んだ仲間から骨を見つけた。
 ぼくらは骨から、生きもののかたちや温度、生きていた時間までをも想像せずにはいられない。❶サイモン・ウィンチェスター 『スカル アラン・ダドリーの驚くべき頭骨コレクション』に収められているのは、三〇〇をこえる頭骨の写真たちだ。
 ペンギンにトドにナマケモノ――頭骨の歴史は、ぼくらがこの星に生まれてからずっと、骨に取り憑かれつづけてきたことを教えてくれる。ゾウの頭骨を見つけた昔の人は、骨のまんなかにぽっかりとあいた穴を見て(鼻だ)、そこにぴったりとはまる大きな目玉を想像した。こうして世界には、ひとつ眼の巨人、シクロプスが歩き回ることになった。
 骨と接する生きもののどうしようもなさを、ぼくらは❷柴崎友香『星よりひそかに』にも見つけることができてしまう。この本は、骨とは関係のない恋愛小説なのに。
 あの人は誰のことが好きで、誰があの人のことを好きなんだろう。体のなかから滲んでくるそんな気持ちは、自分のものだけれど、いうことをきかないし、あの人のなかにも、子どもやおじいさんのなかにもある。そのことを生きている限りずっと忘れられない生きものたちの、骨のようなさびしさが、この小説には描かれている。
 わたしもたこみたいに骨なんてなかったらよかったのに! そんなとき、❸ランバロス・ジャー『水の生きもの』のなかにいる、不思議なたこを見ればいい。
 この絵本は一冊一冊がインドで手作りされていて、手触りもにおいも、ここにだけそっと閉じ込められている。夜中にふと目がさめた子どもが、薄い箱に入れられた絵本を取り出すと、ページのなかのたこが、色や線やかたちやにおいとぜんぶごちゃまぜになって、子どもの目から耳からあふれ出す。世界は水でいっぱいになる。
 そんなふうにいのちを感じさせてくれる絵と、たとえば恐竜学者にとっての骨が、すごく似ていると思うぼくらがいる。猫や人のなかにだけじゃなくて、絵や言葉や気持ちにも、骨のようなところがあるって考えれば、いのちを見つけろとせっついてくる骨として、みんな「生きもの」になれる希望はある。

 

スカル  アラン・ダドリーの驚くべき頭骨コレクション

スカル アラン・ダドリーの驚くべき頭骨コレクション

 

 

 

 

星よりひそかに

星よりひそかに

 

 

 

 

水の生きもの

水の生きもの