2012-10-13

『POV〜呪われたフィルム』は、本当にすごいというか、物語にしても演出にしてもこれまでのJホラーの総決算みたいな感じだし、メタメタメタ・フィクションみたいな感じだし、といってわけがわからなくなりすぎるということもなく、というか、わけがわからないことがないからこそのメタメタメタだけれど、テキスト内テキスト内テキスト……『リング』が作った「呪いのビデオから貞子が出てくる」っていうフィクションのあり方は、もはや恐怖を与えないというか、フィクション内でそんなこと行われてもそれは単なる過去でしかない、昔みたいに現在として感じられない(麻痺してしまった)だろうけれど、それをフェイクドキュメンタリーという、最初から過去のことである媒体を用いて再びむしろ内側から逆転し、呪いのビデオから幽霊が出てくるのではなく、現実が呪いのビデオ化するという、驚異的な現象を起こす。つまり、最近はやりの拡張現実的なものや夢小説的な構造を、ホラーというジャンルを限界ギリギリにまで利用することでいとも簡単に取り込んでいる。

さらに、映像を撮っている視点を登場人物が見てしまうという、黒沢清の指摘した映画特有の現象をも取り入れ、「幽霊がフェイクドキュメンタリーを撮影する」という状態にまで移行する。これは、冒頭から行われる映像の反復再生におけるずれ、というかそもそもフェイクションという、反復される過去そのものを利用して行われる。現在のわたしが過去のわたしを思い出そうとするが、記憶は曖昧であり、目の前の映像のほうが、現在に強く飛来するため、映像内の幽霊がもっとはっきり映っていたりすると、過去の記憶は映像というフィクションに塗り替えられてしまう。そう、過去が塗り替えられる!過去は現在と地続きであるために現在も塗り替えられる!!そうしてカメラにより幽霊が具現化する。

ある女子中学生の幽霊が撮った映像により、学校で古くから噂されていた都市伝説的幽霊が、現在に具現化するということ。

他にも、ここにいないはずのひとが撮った映像とか、その映像がまるでリアルタイム中継のように現在と重なってしまうとか、その回路を通じて現在が過去と同期し、映像に映る存在だった幽霊が実際にあらわれてしまう(呪いのビデオから貞子がでてくるのではなく、貞子のいる呪いのビデオが現実化することで貞子がここにいる)みたいな感じになってたりする。本当にすばらしい。こういうことができるこの時代に生まれてよかった。